チェルノブイリ原発事故の被害と原因、現在の状況 -核の威力を知る-
核の危機が高まる昨今、再び注目を集めているのがチェルノブイリ原発事故です。
1986年4月、ウクライナにあるチェルノブイリ原発4号機が爆発し、放射性物質が広い範囲にわたって放出されました。
事故のときに高濃度の放射性物質が多くの人に被害を与えたのはもちろん、事故から30年経った現在でも放射性物質はチェルノブイリ周辺に残り続け、何百万人もの人々の生活に影響しています。
現在はチェルノブイリを見学するツアーなどもありますが、事故現場周辺は安全な状況とは言えず、現場から半径30㎞以内は今も立ち入りが禁止されています。
この原発事故があったころは核に対する理解が進んでおらず、適切な対応をしなかったことで被害が拡大し、現在も放射性物質が原因の病気で苦しんでいる人がいます。
今回の記事ではチェルノブイリ原発事故の原因や現在の状況についてお伝えします。核の脅威を知るため、過去の事故から一つでも多くのことを学んでいきましょう。
チェルノブイリ原発事故の原因
チェルノブイリ原子力発電所は電気を作る設備として開発され、事故が起こるまで順調に運転を続けていました。
しかし設立当時、原子力や核、放射性物質に対するに対する認識が甘く、十分な設備が整えられていませんでした。
また、原子炉で働いていた運転員も核に対する認識が十分だったといえず、事故後にいくつもの規約違反が見つかっています。
ここからはチェルノブイリ原発事故に関して設備面、ルール面からその原因を探っていきます。
原子炉設備が不十分だった
被害が拡大してしまった大きな要因として、もし事故などで放射性物質が漏れ出したとき、外に有害物質が出ていかないようにする安全装置が無かったことがあります。
この安全装置がないと放射線が原子炉の外にそのまま出て行ってしまい、高濃度の放射性物質で周辺が一気に汚染されてしまいます。
また、原子炉を自動停止する仕組みはあったものの、簡単に解除できる仕組みとなっており、十分な設備がなかったことが分かります。
また、1991年に発表されたチェルノブイリ原発事故の報告書で、そもそも「黒鉛原則チャンネル型炉」というところに欠陥があったと分かりました。
そのため爆発など大きな事故があったときに被害の拡大を止められず、現在もチェルノブイリ周辺が汚染されたままとなってしまっているのです。
運転員の規約違反
チェルノブイリ原発事故は当初運転員による人的ミスが原因だとされていました。
実際、チェルノブイリ原発内では装置を決められた通りに操作しなかったり、専門家ではない人が運転の指示を行うなど様々な規約違反がありました。
しかし1991年の報告書で、チェルノブイリ原発は元々運転員に対して十分な核に関する理解と教育をしていなかったことが明らかになりました。
この原発事故をきっかけに核に関わる人が正しい知識を持つことの大切さが広く認識されるようになったといえるでしょう。
チェルノブイリの現在の状況
チェルノブイリ周辺一体が汚染されることとなった原発事故。事故の後はすぐに誰もいなくなったと考えられがちですが、最も原発に近い村の住人が避難したのは事故二日後のことでした。さらに事故後もチェルノブイリ原発は13年間稼働されていて、放射性物質に対する事後の対策も十分とは言えない状況が続きました。
現在も近隣の村に人が住むことはできず、人の住んでいた住居などの建物はほとんど動物が占拠しています。
自らの意思で汚染された故郷に暮らす人もいますがその数は100人前後。
放射性物質の残るチェルノブイリ周辺が元の町に戻るのは途方もなく先になりそうです。
被害の大きさと現在の課題
チェルノブイリ原発事故で被害を受けたのはチェルノブイリ原発を有するウクライナだけではありません。
最も遠いところだとアイルランドにまで到達し、他にもベラルーシ、ロシアで放射性物質による深刻な被害が確認されています。
2006年、世界保健機関(WHO)と国際原子力機関(IAEA)などが放射線による健康被害に関する調査を発表しました。
それによると事故から20年間で、放射線の影響で亡くなった人は47名、子供の甲状腺がん患者は4000人以上となりました。
それから五年後の調査では子供の甲状腺がんの発症はさらに増えて6000人以上となっています。
放射線の影響は後になって分かるものも多いので、今後もさらに被害が明らかになっていくかもしれません。
また、事故を経験した方のストレスが健康被害につながることから、ストレス軽減のために何をしていくかが課題となっています。
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いかがでしたでしょうか。今回はチェルノブイリ原発事故の原因と現在の被害の状況についてお伝えしました。
事故から30年以上たってもいまだに大きな爪痕を残す原発事故。核の恐ろしさを知り、放射線から身を守る方法についてしっかり考えておきたいですね。