「核のゴミ」とは?使用済み核燃料の処理問題について分かりやすくまとめてみた

核のゴミ

核の脅威と言えば戦争で使われるような、爆弾やミサイルというイメージが思い浮かぶかもしれません。

しかし、人類が戦争ほどの大きな過ちをおかさなくても、核の課題は既に山積みなのです。

たとえ平和的利用をしていたとしても解決できない問題、それが核のゴミとなります。今回は使用済み核燃料など、核の処理について説明していきます。

「核のゴミ」とは?

それでは核のゴミとは具体的にどういうものなのか、順番に解説していきましょう。まず、どのようにして核燃料からゴミが出てくるのか、核の使われ方について理解する必要があります。

プラスとマイナスが大きなエネルギー

核の戦争手段として以外の平和的利用として、原子力発電所が挙げられるでしょう。文明社会に住む私たちは、常に核の作り出す電気の恩恵を受けているのです。ただ、原子力発電所で、核燃料がそのまま電気に変換されているわけではありません。

発電所はタービンを回すことによって電気を生み出しているのです。わかりやすい例で言えば、自転車の発電型ライトが挙げられるでしょう。接地面がくるくる回ることによってライトが点く仕組みとなっています。それを回しているのは私達のペダルを漕ぐ力です。私達自身が電気になってライトを光らせているわけではありません。この役目を担ってタービンを回しているのが核燃料なのです。

タービンを回すために必要な熱を、核は簡単に少量で生み出してくれます。石炭などを燃やす場合に比べると驚きの効率の良さです。核の成分であるウラン235はたった1グラムで石炭のなんと3トン分に相当するエネルギーを生み出すことが可能なのです。

石炭や石油は限りある資源でありながら、どんどん人類が消費しています。ウランも決して無限ではありませんが、あまりにも効率的なため、この先まだ300年ほどは大丈夫だろうと言われているのです。

まさに夢のエネルギーではないかと思えそうなところですが、厄介な点があります。それが核燃料に含まれるウランやプルトニウムが放つ放射性物質です。放射性物質は、人間に多大な被害を与え、環境も汚染してしまうのです。石炭などは燃やしてしまえばそのまま炭になって終わりですが、核燃料を燃やしたことによって出る使用済み核燃料はそういうわけには行きません。よって、きちんと漏れないように処理しなければならないのです。しかし、その処理方法にも課題があるわけです。

核のゴミの処理問題

使用済み核燃料となったいわゆる核のゴミが、万が一の手違いによって外の世界に漏れてしまった場合、その被害は想像を絶するようなものになります。

私達にとって身近な事故で言えば、2011年の東日本大震災の福島第一原発事故が挙げられるでしょう。地震と津波によって使用済み核燃料を冷やすことができなくなった施設内で、メルトダウンが起きました。外に漏れた放射性物質のために、原発周辺の地域は完全に汚染されてしまい、2018年現在でも立入禁止となっています。

また、もっと遡ればロシアのチェルノブイリ原発事故も挙げられるでしょう。30年以上経過した今も、当然住民はその地に戻れませんし、未だにガイガーカウンターには放射能の反応があるわけです。

このように、核は大変便利なエネルギー源でありながらも、使用済み核燃料の処理を誤ってしまうと取り返しのつかない事故につながってしまいます。だからこそ、私たちは次々に出てくる核のゴミをきちんと保管しなければならないのです。

核のゴミの再利用計画の頓挫

日本ではそれらの核のゴミを再利用しようと、ずっと動いてきました。もし実現すれば、まさにエネルギーが無限に生み出せる夢のプロジェクトです。

しかし、核のゴミ(使用済み燃料から取り出したプルトニウム)を再利用する高速増殖炉「もんじゅ」は、多大な資金を投資したにも関わらず、安全性の不備が訴えられ、廃炉が決まってしまいました

核のゴミを宇宙に捨てるというアイディア

突飛なアイディアとして、宇宙へ捨てるという考えもまったくないわけではありません。ただし、現実的にはかなり難しい案です。万が一大量の核のゴミを飛ばすロケットが故障して墜落でもしたら、人類を脅かすほどの大事故になってしまいます。

核のゴミは地中深くに埋めるしかない

核のゴミの再利用以外の手段として、今最も有力なのは地中深くに埋めることとされています。事実、他国ではそうしている国もあります。ただし、日本ではまだ方針が定まっておらず、施設の中のプールでずっと冷やし続けながら、どう処理をしようかと迷っている段階です。

もちろん、核のゴミを保管しておく空間にも限りがあり、もう数年のうちに全てが埋まってしまうだろうと言われています。

「核ゴミマップ」とは?核のゴミの候補地は?

核のゴミ処理の現実的な方法は地中に埋めることです。

そこで政府は核ゴミマップ(正式名称:科学的特性マップ)という、核のゴミを埋めるのに適切な候補地を抽出した地図を作成し、公表しました。その分布は北海道から沖縄まで、全国にまんべんなく連なっています。しかし、これだけ地震や災害の多い日本で、本当に安全に使用済み核燃料を埋めることができるのか、些か疑問が残るところです。

核ゴミマップ(科学的特性マップ) 出所:経済産業省資源エネルギー庁

最後の手段としては海外となるわけですが、発展途上国に多額のお金を払って核のゴミを埋めるというのを、人間としてどのように考えるべきでしょうか。日本からのお金によってその国は一時的に潤うかもしれませんが、私達が使う電気によって生み出された核のゴミが、他国の人々が住む地面の下に埋められるわけです。諸手を挙げて賛成できることとは言えないでしょう。

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以上のように、使用済み核燃料である核のゴミの処理に、いつ限界が来るのかはもはやわからない状況です。その間に日本の財政状況が悪化するかもしれません。

核のゴミは負の遺産となる最悪のケースをきちんと考えて備えておくべきと言えるでしょう。