ミャンマーの核開発問題の歴史を分かりやすく解説してみる

ミャンマーの国旗
ミャンマーの国旗

終戦直後まで、核の保有は予算や軍事力のある大国が持つ究極の兵器でした。しかしながら、技術が発達し、情報が世界中から得られるようになった今、小国が大国と対等に渡り合うための手段として保有を目指すようにもなっています。今回は核開発の歴史を持つミャンマーについて解説します。

ミャンマーの核開発の歴史

ミャンマーの核開発の歴史を知るためには、まず国そのものの過去を知る必要があるでしょう。

国の成り立ち

かつてミャンマーはビルマ族により国家統一が成された国です。しかしながら、様々な民族が対立し、幾度も争いが繰り返されてきました。19世紀に入り、ついには当時の最強国であったイギリスが植民地支配をします。

しかし、それでも平穏は訪れません。現地の人々は独立の機運を高め、アウンサンを中心にビルマ国軍を掌握し、戦い続けます。1948年に独立を達成させますがアウンサン将軍は暗殺されてしまうのです。立て続くクーデターの中で、荒れた国を治めるためには絶対的な力で国民を押さえつける必要がありました。そこで企業は国有化され、経済は鎖国、軍主導の完全な社会主義共和国となったわけです。

そんな中でミャンマーのアウソサンスーチー氏をはじめとする、民主化の戦いも起きてきました。このような流れの中で、同じ社会主義体制を支持したのが中国であり、寄り添ってきたのが同じ独裁国家の境遇にある北朝鮮でした。

核開発着手に至るまで

2000年代に入り、北朝鮮はすでに核開発を行える技術を有している状況でした。一方、ミャンマーは長い軍事態勢の中でビルマ式社会主義の限界が来ているところだったのです。

後ろ盾となっていた中国も、世界全体がグーバル化していくなかで、一国に依存するにはあまりに高いリスクが伴う状況でした。鎖国状態を解いて、世界からの支援と協力が必要になったわけです。しかしながら、貧しい国の経済状況の中、ぶつかりあう国民の主張もあれば、ロヒンギャに代表される人権問題など、容易には解決できない課題が山積みでした。

突然体制を変えて混乱を招くと、内乱だけでなく他国に侵略されてしまう恐れもあるわけです。そこをあざとく見抜いたのが北朝鮮でした。北朝鮮は自国が有している核開発技術をミャンマーに売ることで、多額のお金を得ようとしたわけです。

ちなみに北朝鮮はミャンマーの他にもイランなど、貧しくて危機的状況にある国へ、核開発技術の情報を流したと噂されています。報道のデータによれば2009年の7月2日にミャンマーのシュエマン将軍が北朝鮮を訪問、軍事協力の契約を交わしたとされています。同年8月には、オーストラリアの新聞「シドニーモーニング・ヘラルド」が、ミャンマーが核保有をしようとしていると、核開発のニュースをスクープしました。

ミャンマーの核開発の現状と問題

現在、人類はようやく過去の過ちを見つめ直し、軍事力による制圧ではなく経済協力によってお互いが幸福を目指せる策を取ろうとしています。核兵器を使用する可能性は随分低くなっていることでしょう。

ミャンマーと各開発の現状

ミャンマーの核開発においても、様々な憶測が飛び交っていましたが2016年6月2日に、ミャンマー政府高官がその事実を認めました

核開発はその事実があったこと自体が問題となるわけではありません。使用されなかったことに意味があるわけです。すなわちこれはバッドニュースというわけではないと考えられます。開発の過去を認め、その上で今は中止していることを明言されているのですから、ミャンマーが世界と連携しようとしている姿と好意的に解釈できるでしょう。

ミャンマーと核開発の問題

ただし、問題点がまったくないわけではありません。ミャンマーが過去の事実を認め、情報をある程度開示した理由を2つの視点で考える必要があります。

ひとつは好意的解釈として、平和の道を目指すために世界と協力することを約束したと考える見方です。そしてもうひとつが、経済的に核開発ができない状況となり、やむを得ずストップさせたという見方です。

後者の場合、国そのものが発展していけば、また内密に核開発が行われる可能性は否定できません。戦後の焼け野原から日本があっという間に復興し、それどころか高度成長期を迎えて当時世界第2位の経済大国になった事実を考えてみてください。どんなに貧しい国でも、何かのきっかけで爆発的な経済力を手にする可能性はあるわけです。

とくに貧しい国にはたくさんの投資が集まってきます。投資というのはリターンを目的に行われるものです。ほとんどはうまく行きませんが、当たった際の利益は莫大となります。その対象となる国がミャンマーになる可能性は十分にあるのです。

特に現在、日本を含めて先進国は労働力不足に悩んでいます。ミャンマーの安い人件費は、喉から手が出るほどほしい労働力と言えるでしょう。今も発展をつづける中国とインドの橋渡しのような役目を担うようになれば、どんどん国力をつけていくはずです。その際に、核開発が再び行われる可能性はあります。

あくまで「破棄」ではなく「中止」なのですから。

ミャンマーの核開発問題のまとめ

貧しい人々は豊かさを求め、豊かな人々は力を求めるのが世の常です。このような人間のもろい心のバランスが少しでも乱れたとき、小国の暴走を止めるのはかなり難しくなります。

大国であれば様々な人材が存在し、専門家や有識者がコントロールを効かせることでしょう。しかし、僅かな人数で国を動かしている小国が核を持ったときというのは、暴走する可能性がかなり高くなるわけです。

世界の国々が様々な課題を残すミャンマーに視線を向けて、手を差し伸べていく必要があるでしょう。