シリアの核開発問題の歴史を分かりやすく解説してみる

シリア国旗

国内での内戦が激化するシリア。

多数の難民がうまれる状況は「21世紀最大の人道危機」と言われています。

そんなシリアですが核開発容疑国としても有名です。

シリアは一体どのように核開発を進めてきたのでしょうか?

そしてその後ろに見え隠れする”あの国”とは?

分かりやすく解説していきます。

 

シリアの核開発の歴史

まずはシリアの核開発の歴史を確認していきましょう。

 

シリアってどんな国?

まずそもそもシリアとは一体どのような国なのでしょうか?

シリアは正式名称をシリア・アラブ共和国といいます。

その名の通り共和制、大統領制の国ですが、1963年の3月8日革命でのクーデター以降はバアス党(アラブ社会主義復興党)が政権を握る実質的な一党独裁制になっています。

(中国、北朝鮮、そしてかつて存在したソビエト連邦を想像して頂ければ分かりやすいと思います)

 

面積は18.5万平方キロメートルです。

これは日本の約半分です。

 

人口は約1,850万人。

この数はルーマニアとおおよそ同じ数です。

国内の労働人口500万人のうち失業状態にあるのがなんと半数とされています。

また国民の3/4が貧困状態にあるようです。

 

そんな一党独裁で国民は貧困に苦しむシリアですが核開発容疑のある国としても有名です。

 

核拡散防止条約国加盟国のシリア

そんな核保有国の疑惑があるシリアですが、意外にも核拡散防止条約加盟国です。

 

核拡散防止条約(NTP)とは何だ!?という方のために簡単に説明を。

核拡散防止条約とはその名の通り核の保有が拡がらないように、1963年に国連で採択された核保有を禁止する条約です。

(なおアメリカ、中国、フランス、イギリス、フランス、ロシアは例外的に核保有が認められています)

ほぼ全ての国が本条約に加盟しており、加盟していないのはインド、パキスタン、南スーダン、イスラエルの4か国のみです。

 

シリアは1969年9月24日にこの条約の加盟国となりました。

現在もこの条約の加盟国です。

 

ただしIAEAの追加議定書にはサインせず

核拡散防止条約に加盟しているシリアですが、見逃せない点があります。

それはIAEA(国際原子力機関)の追加議定書に合意していないという点です。

 

IAEAの追加議定書は核拡散防止条約を強化する意味合いでつくられた議定書です。

核拡散防止条約に加盟しているにも関わらず核開発を進める国が多かったのです。

 

シリアはこの追加議定書にサインをしないどころかIAEAとこの件で交渉をもスタートさせていない状態なのです。

 

核開発容疑がかかるシリア

シリアの核開発容疑が始まったのは1979年からです。

シリアはこの年からIAEAに自国の核活動に関する情報を提出していません

 

これを理由にアメリカとイスラエルは原子炉の販売を禁止しました。

これに対しシリアは自分たちの核活動は軍事用ではなく、医療用であると反論し続けています。

 

そんなシリアは1991年に小型の研究用の原子炉(MNSR)を中国から購入しました。

これがシリアの本格的な核研究の始まりとされています。

 

イスラエルにより原子炉が破壊される

2007年9月5日から6日かけての夜間、イスラエル空軍が建設中のシリアの原子炉を攻撃し、破壊しました。

 

なお2011年、IAEA(国際原子力機関)は報告書を通してイスラエルによって破壊された原子炉は核開発に必要な原子炉であった可能性が高いと報告しました。

 

そして興味深いことに2008年4月24日に米ホワイトハウスが興味深い発表をしたのです。

イスラエル空軍が破壊した原子炉はとある国の原子炉に酷似しているというのです。

 

シリアの核開発の裏に見える北朝鮮の影

その国とは・・・北朝鮮

核開発でお馴染みの(?)国です。

 

アメリカは北朝鮮の寧辺にある原子炉の内部構造がシリアのものとかなり似ていると指摘。

また寧辺の核燃料製造工場の責任者とシリアの原子力委員会のトップが一緒に写っている写真も発見されたそうです。

 

更に北朝鮮にとってシリアは数少ない国交のある国。

これは極めて怪しいですね。

 

シリアの核開発の現状と問題

こうした歴史を歩んできたシリアですが、核開発の現状はどうなっているのでしょうか?

 

核実験自体は行っていない

核開発容疑が強いシリアですが、これまで核実験自体は行っていません

核が実用段階まで進んでいない可能性もありますし、イスラエルやアメリカを刺激したくないという思惑があるのかもしれません。

 

日本も標的になるのか?

気になる日本への影響ですがほぼないと考えて大丈夫です。

シリアが核を飛ばすときに使うとされるミサイルはスカッドDミサイルと考えられます。

このスカッドDミサイルの最大射程距離はわずか700キロメートルです。

北朝鮮の最新の弾道ミサイルの最大射程距離が1万キロメートルとされているのでその差は歴然です。

 

まず政治的に日本とそれほど大きな敵対関係もありませんので敢えて直接的な標的にするのは考えにくいです。

 

シリアの核開発問題の問題点

シリアの核開発問題の問題点。

それは「イランのバックにつくロシア」と、「イスラエルのバックにつくアメリカ」の火種になりかねないということ。

事実、イランとイスラエルはシリアを戦場に今まで戦いを繰り広げてきました。

シリアの核開発によって東西の戦いが再開する恐れはゼロとは言い切れません。

 

シリアの核開発問題のまとめ

日本の半分の国土面積しかない国ですが、核開発の容疑がかけられている国、それがシリアです。

2007年にはイスラエルから攻撃を受け、核施設が破壊されました。

それにより浮かび上がったシリアの核開発の援助国「北朝鮮」。

 

小さな国ではありますは中東の平和の実現のためにはシリアの核開発がストップすることは大事な要素です。

一党独裁のシリアですが、政府が平和の実現のため、そして貧困に苦しむ国民のために核開発を終わらせることを願ってやみません。