イスラエルの核開発問題の歴史を分かりやすく解説してみる

イスラエル国旗
イスラエル国旗

イスラエルは、中東で唯一核拡散防止条約(NPT)に加盟していない国であり、大量破壊兵器を所持している恐れがあるとして、各国から疑念を抱かれている国です。

しかし当のイスラエル政府としては、この疑念に対して否定も肯定もしていません

イスラエルは最初に核を使用することはないが、二番目に甘んじもしないという談話もあり、「曖昧政策」と揶揄されることもあります。

イスラエルの核保有の是非については、これまで国際社会で大きな問題にされることはなく、軍事大国アメリカでさえ黙認しているような状態でありました。イスラエルの核問題については、最大の盟友アメリカの関与が大きく影響していると考えられるのです。

イスラエルの核開発の歴史

イスラエルは1948年5月14日に建国した、まだ比較的新しい国家ですが、この頃から核開発が始まっていたとされています。

初代大統領のワイツマンは化学者であり、彼の指示を受けた科学者たちはウランの生成方法を確立しました。

その後フランスから技術支援を受け、度々共同核実験を行っています。

また、フランスから原子炉を譲り受けるなど友好関係を築いていましたが、第三次中東戦争によって2国間の関係は悪化。核兵器開発の協力関係は崩れてしまいました。

その後イスラエルは、南アフリカと核開発の協力体制について合意し、大量の兵器や核技術を提供する代わりに、ウランを手にすることとなりました。

南アフリカ沖で強い閃光が衛星によって観測されるなど、両国が核実験をしていることは明らかでした。そしてこの状況をいち早く察知し、干渉したのがアメリカだったのです。

イスラエルとアメリカの関係

イスラエルは、アメリカにとって中東最大の同盟国であると同時に、両国の関係はアメリカの中東における政策の重要な要素になっています。

アメリカはイスラエルを中東における最も信頼できるパートナーと評しており、建国から今日までその同盟関係は続いており、年間30億ドルを超える資金援助を行っていることや、合同軍事演習も度々行っています。

ではなぜアメリカとイスラエルがこうも友好関係にあるのか、そこには3つの理由が考えられます。

1つ目はユダヤ系米国人の存在です。彼らは同じユダヤ系のルーツをもち、両国の政治・経済に大きく関わっていると言われています。

2つ目は、アメリカにとってイスラエルが、中東における軍事・政治的な拠点として非常に重要な意味をもっていることです。情報収集はイスラエルの諜報機関なくして成り立たず、アメリカの心臓部分と言えます。

そして3つ目は、イスラエルが核兵器を保有していることです。数十~数百発は保有していると考えられており、これを否定も肯定もしないイスラエルの姿勢は、周辺の敵対諸国に対して抑止効果を高めようとする狙いがあります。

イスラエルが未だ核を使用しないこと、曖昧政策をとり続けられることの背景には、アメリカの軍事力がバックにあるからです。イスラエルとアメリカが仲違いすることは、イコール中東における核戦争の勃発を意味するのです。

イスラエルの核開発の現状と問題

IAEA国際原子力機関に所属している周辺諸国は、イスラエルの核開発能力を危惧しており、核拡散防止条約への加盟と、すべての核活動がIAEAの監視下に置かれることを強く要請しています。

ところが、イスラエルは「核拡散防止条約への加盟はこの政権の利益に反する」として否定しています。その他兵器開発に関するあらゆる条約や宣言も一貫して拒否しており、イスラエルの核開発は、現在も行われていると見られています。

その技術力は非常に高度であると見られており、イスラエルは、レーザーによるウラン濃縮技術を開発している可能性が高いです。未だ世界では、遠心分離法による濃縮が主流で、アメリカや日本ではまだ開発途中の技術であります。

イランとイスラエル

国際社会におけるイスラエルの姿勢とは対照的に、イランは核拡散防止条約にも加盟し、IAEAの査察も問題なくクリアしているものの、アメリカとイスラエルから追い込まれるように経済制裁を受けています。

あくまで核所持疑惑の範疇を得ない上、法的権利によってその正当性を主張しているイランと、アメリカという強力な軍事力を盾に、曖昧政策によって確固たる地位を築いているイスラエル。どちらがより危険な国であるかは明らかであり、理不尽且つ不公平であるところなのですが、もし仮にイスラエルが世界有数の核兵器保有国であり、アメリカが核開発を容認してきた事実が公になった場合、国際情勢に大きな変化をもたらすことになります。

核拡散防止条約とIAEA、中東とアメリカの軍事的、政治的な思惑が渦巻いているのです。

イスラエルの核開発問題のまとめ

イスラエルの思想は、ユダヤ人迫害の歴史から成り立つものであり「全世界から可哀相と言われて滅ぶより、全世界から憎まれても我々は生き残る」という強い意思をもっています。それ故に、核爆弾を使用することにためらいはないのです。

また、イスラエルが保有しているのは核兵器のみではなく、

近年は、北朝鮮の核問題ばかりがフォーカスされていますが、同様にイスラエルの核問題についても大きく報道されるべきであり、関心を寄せるべき問題なのです。